希望は持っとけ 10歳を過ぎた君に

男の子が知りたくても誰も教えてくれない事、未来から過去の自分自身とこれを読んでくれるあなたへ

スポーツはモテるようで、案外モテない

私はそんなに運動が好きでもなかったし、得意でもなかった。

運動会で駆けっこをしたら、確かに遅くはなかったぐらいで、スポーツが出来てモテる同級生が少し羨(うらや)ましかった。

 

でも、10歳の頃の私は、ちゃんと分かってた。

 

 スポーツで勝てても、モテるワケじゃない

 

だから勉強もほどほどで良いんだけど、スポーツに関しても「その競技が好きだったらやれば良い」ってことだけ。

やっているうちに自信が付くとかそう言う効果もあるんだけど、それよりもスポーツする事が億劫(おっくう=面倒臭い)だった子供の頃の私自身にもちゃんとメッセージを出しておきたいと思います。

 

教えるコーチがヘボなら、ヘボい選手しか生まない

まず、育った環境がよくなかった。

とにかく良いコーチが居ない。

どうやったら伸びるかと、どうやったら故障(ケガ)をしてしまうのか。

分かってる先生も居なけりゃ、少年野球のコーチもまったくの素人(しろうと)同然だった。

 

だから教えてもらって上手くなるんじゃなくて、回数重ねりゃそりゃそれぐらい出来るでしょうよ・・・ってレベルから、通っていた小学校は抜け出せないままで居た。

とにかく全国ってことを意識できるような環境ではなかった。

 

たまたま私は12歳の時に、スポーツでは無い環境で全国大会に行き赤っ恥を書く事にはなるんだけど、とにかくどこかと試合をすればボロ負け。

かっこいい先輩も居たけど、スポーツに関しては本当に胸を張れる様な世代も居なかったし、本当にウチの小学校はサッカーやっても野球やっても、バスケやってもなかなか上手く行かなかった。

(バスケだけは地区大会でそこそこ良いところ行くようになったけど、それも新しく着任してきた先生が来てからだったし)

 

優秀なコーチではなかったけど、怪我をしないようにするってことだったら小学校低学年時の教頭だった中尾先生ぐらいしか、本質がわかっている人は居なかったなぁ

超軍人式で怖い先生だったけど、良く中庭で走ってはコケまくって泣いていた私の動きを見ていて、この先生だけは他の先生には無い指導をしてもらった

 

 君は、転ぶ走り方をしている

 だから転んでしまうんだ

 

言われている意味が分からなかったし、毎週月曜日の朝礼で「起立!」「休め!」って号令で全校生徒が泣きそうになるぐらいの気迫だったので、ただ単に『怖いジジイに怒られている』ぐらいにしか考えてなかった。

 

しかも中尾先生からは「教えてどうにかなる状態じゃないほど、君の走り方が下手なんだ」と一蹴されてしまう。

ひとことだけ中尾先生から「もう少し身体が大きくなったら、すぐに身に付くようになる。だから今教えられなくて、すまない」って言葉をかけてもらった。

 

中尾先生のことは結局『怖いジジイ』『うるさいジジイ』だとしか思っていなかったんだけど、今になって振り返るとあの時「ああしろ」「こうしろ」と直接言われてたら、私は間違いなく運動が出来なさ過ぎる自分の事が嫌になって、不登校になっていたと思う。

それぐらい理に適っていた(りにかなっていた=物事の本質に沿っている)教え方が出来て、しかも区内でも一・二を争う厳しい先生だったから、小学校低学年ではその厳しさのレベルについてこられないのは仕方なかったはず。

 

その後、中尾先生は異動されたのか定年退職されたのかは定かではないが、任期を全うされて私の小学校からは去っていった。

この教頭先生を悪く言う人は居なかった。口は悪かったり威圧的な存在感もあったけど、とにかく自分に厳しい人だったし他人にも厳しい方だった。

弱いものいじめを徹底して許さない空気を作ってもらった教頭先生だった。

特に保護者・親の世代からの信頼感は抜群で、学校が工事で給食室が使えなかったり体育館が使えないって言う時代のやりくりを、先頭を切って全て行っていた先生だからすごい人だったんだと思う。

 

とまぁ、スポーツのことからは離れてしまったが、おそらく海軍上がりの先生だったはずなので、それぐらいのコーチに恵まれなかったのだ。

むしろそれは、幸運だったのかもしれない。

 

自分自身の経験に裏打ちされた「スポーツできなくてもモテる」

小学校4年生位からスポーツが出来る=モテると言う世界の中で生きるしか方法がなかったんだけど、球技が上手い・走るのが早いからって必ずモテたのか?と言うと、実はそうでもなかった。

 

確かにチヤホヤされることは多いだろうし、スポーツが出来る事で「かっこいい」と思われやすくなる。

でも、私自身が運動全然苦手&鉄棒の前転もやりたくないだった保育園時代に、大体のクラスの女の子とデートみたいにラブラブだったのはなんだったのよ?

疑問が浮かぶ。確かにチヤホヤされてるけど、彼らが恋愛に時間を割いているようには思えない。これは、一体・・・。

 

そんな中、サッカーがメチャクチャ上手い同級生が居た。

確かに体育の授業の度にチヤホヤされるし、

理由は「サッカーが上手いから」って単純明解。

でも、彼自身はそんなにモテている訳でもなければ、誰かと付き合ってる風でもない。

 

4年間一緒のクラスだったS君のことである。

サッカーが上手いだけじゃなくて勉強も出来る子だったし、見た目も決して悪くなかった。まぁ、ちょっとサルっぽかったけどさ。

仲も決して悪くなかったんで6年生の時に一度聞いてみたことがあったんだけど、驚いた答えが返ってきた。

 

『Sくん、女子にすごい人気じゃん?』

「そんなことないよ」

『だって、サッカー上手いし、女の子から好かれてるんじゃないの?』

「全然(笑)」

『え?それじゃ、日曜日にデートとかしてないの?』

「毎週練習ばかりだし、デートしても(相手の態度がつまらなくて)面白くないんだよ。そんな事言ったら、Takoだって結構人気あるんだよ?」

『そんなの初耳だ』

「○○さんに、△△ちゃん、それからNさんだってお前の事好きなんだぞ」

 

と言う訳で、あんなに授業中にチヤホヤされてはいるけど、S君にとっては付き合いたいほどの女性から好意は持たれてなくて、チヤホヤされるのも単なる迷惑でしかなかったと。

 

これには雷を打たれた衝撃が走りましたよ。

なんだよ、あんなにサッカーも勉強も人一倍頑張ってるSくんなのに、全然モテて無いなんて!!!

 

前述のNさんは・・・まぁ、思い当たる節はあるんですけど、小学校当時はうっとうしかったなぁと言う思い出しかなかったです。

中学校も同じだったので、その時にお互いの存在が励みになって良い思い出は少し出来るんだけど、それでもまぁ・・・小学校時代にとても好いてくれた相手に、私は

「邪魔」

とか

「関わらないで。つまらなくなるから」

などと、酷い事をいっぱい言ってしまったなぁと。

仮にそこで良い対応が出来たとしても、結局根っこの部分で「ずる賢くて嫌な奴」と言う所は大人になって会っても変わらなかったので、小学校の頃のNさんへの対応は間違っては居ませんよ。

今更あんまり後悔してもしょうがないでしょうし、あの頃のTako少年を褒めてやりたいです。

まぁ、もう少し小学校時代にイチャイチャしても良かったかもしれないんだけど、どうせ気分がコロコロ変わるNさんに振り回されちゃうの、分かっていたしね。

 

結構意外なことが女性の心に刺さるもの

一応小学校6年生の頃のお話を続きでしますが、クラス内でリレーを行うって言う授業が体育であったんです。

実は3年生の時に走っていたら急カーブで捻挫してしまい、それから走るのは鈍足になっていたんです。

そこからは地道にリハビリ。早く走ろうとすると襲い掛かってくる恐怖心と、2年余り戦っていました。自転車もスピード出せなかったし。

5年生の頃は鈍足なままなので、担任の先生は「Tako=走力G~Fランク」(パワプロ風)と考えたに違いありません。確かにそうだったもの。

 

ただ、6年生になってその恐怖心からようやく立ち直れるようになったんです。

前述の中尾先生の言う「身体が大きくなったら」の時期とも合って来たのですが、スイミングスクールでクロールや平泳ぎを泳ぐうちに、だんだん陸上でも早く走れるようになってました。

つまり骨盤と脊柱と、脚の動きが連動するようになってきたんですね。

走るフォームも劇的に変わっていきましたし。とにかくカーブでスピードを落とさなくてもそのまま走れるって言う、半年前までそんなの無理だと思うような、訳の分からないフォームで走れるようになってました。

担任の走力評価はそのままで、走力Aと言うよりSランクの女性・Hさんに、F~Gランクの女子1名と男子2名の鈍足がぶら下がるチームに振り分けられるのです。

しかしこの頃、私の走力はBからCランクに。もう一人の男子もEランクぐらいにはなっていたんです。つまりいろんな計算ミスが発生。

 

このチームで一緒だったHさんに好かれていた事を知ったのは、小学校を卒業してからでした。

チーム分けが発表されたときに、一番喜んだのは私。

理由も「Hさんがリードを作ってくれれば、このメンバーで負けないのはわかっているから」と言う、まぁ・・・救いようが無いほど勝利至上主義な発言でした。

デリカシーゼロですよね!

 

この時Hさんは「足が早くて一体何になるんだろう。身体も大きくて可愛さもないし、大会で勝っても誰も喜んでくれる訳じゃないし・・・」と言う葛藤がかなり強くあって、走るのがかなり嫌になっていた時期でした。

確かに女性にしては身体がガッシリしていて、足の速さは怪物級だったんですけど・・・。

で、私たちのチームは作戦が功を奏したのもありますが、連戦連勝でした。

Hさんが150m走って作ったリードは20mから30m。

それを他の男子と女子が75mずつ走っている間に約半分~1/3にする。最後は私がそのリードを150m走る間に使い切る。

リレーのアンカーを務めたのは基本的にこの時だけ。

高校時代・体育祭の捨てレースではアンカーしましたけど、正直上でも下でもどっちでも良い体育祭だったので気楽に走って良い思い出にはなりましたね。

 

Hさんはこのリレーで仲間に信頼される喜び以上に、私が最後にリードを使い切って逃げ切る度にハイタッチして、喜ぶその瞬間が嬉しかったと本人から聞いた事があります。

そう、最終ランナーでゴールしたあと。

ぜーぜーはーはーと息を切らしながら、Hさんにバトンを返す時に「Hさんが一生懸命走ってくれたお蔭です、ありがとう」って何度も伝えていました。

Hさんにとってはその言葉以上に、バトンを両手で大切に差し出す光景があたかもバレンタインでチョコを渡されていたように感じられたのです。

結局Hさんの秘めたる思いは私には届かず終いで、別々の中学校に行って会わなくなってしまったのですが・・・中学校になってから集まった時にその話を聞くことが出来ました。

「いやー、あの時ほど男性から、大切に扱われる気が今後の人生で起きそうな気がしない」とHさんは語っていました。

いやいや、そんな事は無いでしょう!

長い黒髪をなびかせて同級生をあっという間に置き去りにしていったHさん、あの時、あなたは確かに輝いていましたよ!

男子は皆、普段の生活態度も尊敬してましたもの。

他人の悪口を滅多に言わない良い子で、何事にも真剣に取り組む人だって。

・・・そう言えば運動会で優勝した時に、私と男子の有志でHさんに感謝の言葉を述べたなぁ。

「あなたと一緒に優勝したくて頑張りました。私たちは幸せです」って。

男と女が惹かれあう時って、それまでの経緯が知らないうちに出来ていたりするんです。それが良い方に作用する事って、あるんですよねぇ・・・。

 

 

実はもう一人好意を寄せてくれていた方が居たんですが、この方・・・。

なんと、学級委員を一緒に努めた私の天敵でもあった人。

同じクラスに4年間居ましたけど、良くケンカもしたし、良く泣かされました。ハッキリ言って嫌なヤツでした。

でも、仕事に関してはなかなか出来る人だったので、学級委員の時はケンカをなるべくしないように気を使いつつも、とにかく仕事が上手く回ってくれるために私は悩んだり、動いてたことを昨日のように思い出します。

後日談で複数の女子から「どんな事があっても、自分の出来る部分を曲げずに評価してくれたからTako君のことは好きなんだけど、いつもあんな風にけんか腰で話しちゃうから嫌われてるんだろうな」と言うことを聞きました。

前述のリレーで多少足が早かった時のイメージを、大きく膨らませてくれたのもあったようですけど、Hさんがあきらめる事になったのはこの学級委員が居たからと言うのは複数の女子から聞くことになります。

 

勉強がメチャクチャできるOさんという女子と、Tさんというクラスメイトの女子が席が近くに居たんですが・・・二人からは「Takoくん、他の女の子が好きなんだろうけど、Hさんを助けてあげた方がいいと思うよ」って忠告を受けたほどです。

裏で何があったかは想像に難く(かたく=むずかしく)ないんですが・・・つまりまぁ、女子の間でイジメがあったと言う事ですね。

学級委員の名誉のために申し上げますと、それほど他の女子に取られたくないって言う意識が強かった故(ゆえ)の行動です。

ただ、それがNさんに対して行かなかったのは・・・まぁ、Nさんとは小学校低学年ですでにキスしたりとか、姉同士が仲が良かったからとか、

学級委員には埋められないアドバンテージがあったんですよね。

 

それ以前に私は別のクラスメイトにゾッコンでして、振り向けばいつでもデートできそうな女子を見向きもせずに、いつまで経っても見向きもされない女子にドキドキしていた痛い6年生だったなぁと。

クラスの複数の女子の恋心に火をつけてしまった、授業リレーの「鈍足だったはずのTakoが、アンカーでクラスの走力Bランク選手と対等に走れている」と言うインパクトは絶大でしたね。

しかも赤っ恥かいたけど、好きなことをしてたら全国大会にも行かせてもらったし。

 

モテるかどうかで言えば、スポーツはそれほど大きな要素では無いんです。

ただ、心の底から走ったり投げたり、蹴ったり泳いだりしている動作を楽しめているかどうか、それが相手の心を動かすと言うことなんでしょう。

そのためには、身体を動かす意識が変わらないといけないと言う事が分かっていれば、運動が苦手でも嫌いでも全然良いんですよね。

 

時代が平和なら太っていても許されますし、痩せなくてはいけないと言う事もありません。

小学校のうちは楽しむ機会に触れられたら、そんなチャンスを目一杯に楽しんで欲しいなと思います。

 

学校の部活は苦しくてもやらなきゃいけなかったり、個人の自由が許されませんからね。

やることで付く忍耐力も、本当に万能なモノでは無いこともありますし。

 

それを兼ね備えている人は凄いなぁと言う尊敬の念だけあれば、良いんですよ。

だから、女性にモテるために男子がスポーツをする必要性は、ハッキリ言ってないんです。

 

お腹が空いたからって、料理を食べても・・・

まさか箸や食器を食べることはしないでしょう?

それと同じレベルですよ。

指を加えるよりも、楽しそうに好きな事をしていたほうが、モテるんだよ。

急がば回れ、と言うじゃないか。

 

 

boys be aspiration

少年よ、希望は持っとけ

その通りの未来がやってくるから